無職の立場になってから、図書館に行く回数がかなり増えた。本を借りるのはもちろんだが、DVDも借りている。最新のものは予約で埋まっていて中々、借りられそうにないが、年数の経ったものはレンタルショップと同様、比較的容易に借りられる。
今日は映画『ザ・ムーン』を借りた。
普段は本もDVDも探すのが面倒で、Webから予約することが多いのだが、 今回は館内をブラついて目に留まったものを借りた。Web予約ではジャケ画像もないので、このDVDに行き着かなかったかもしれない。
映画は2007年のドキュメンタリーで、人類初の月面着陸を遂行したアポロ計画の宇宙飛行士へのインタビューと当時の映像で構成されている。宇宙飛行士達の言葉に感銘も受けたが、観ていて思ったのが、2番目は記憶に残らない、ということ。
60年代、ソ連とアメリカは有人宇宙飛行技術を競っていたが、その結果、初めての有人宇宙飛行はソ連のボストーク1号で宇宙飛行士はユーリ・ガガーリン。2番目はアメリカのマーキュリー・レッドストーン3号で宇宙飛行士はアラン・シェパード。
ユーリ・ガガーリンについては「地球は青かった」という名言(本当はそう言っていないらしい)さえ知っているが、アラン・シェパードについては名前さえ全く記憶にない。何ならボストーク1号という宇宙船の名前は記憶に何となくあるが、マーキュリー・レッドストーン3号は初耳だ。
その後、初の月面着陸はアメリカのアポロ11号で宇宙飛行士はニール・アームストロング、バズ・オルドリン、マイケル・コリンズが達成し、2番目はアポロ12号で宇宙飛行士はピート・コンラッド、アラン・ビーン、リチャード・ゴードンである。こちらもアポロ11号、アームストロング船長はもちろん、バズ・オルドリンまでは何となく記憶にある(マイケル・コリンズを覚えていないのは指令船で待機し、月には降り立っていないせいか)が、2番目はアポロ12号ということは想像はつくものの、宇宙飛行士達の名前は全く記憶にない。アームストロング船長の「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ。」の名言もやはり覚えている。
これは私だけではあるまい。一般の人々の記憶は大体、私と同じようなものだと思う。2番目は人々の、世の中の、記憶に残らない。
ただ、2番目も素晴らしいのは確かだ。1番目だけが素晴らしいのではない。
アポロ11号でも計画の初期段階ではバズ・オルドリンがアームストロングより先に月面に降りる予定だったという話があるし、指令船でマイケル・コリンズが月での役目を終えた着陸船をキャッチしなければ、アームストロングもオルドリンも地球に帰って来ることが出来なかった。そして、シェパードが宇宙へ飛び立ったのは、ガガーリンの偉業のたった3週間後だ。
この、1番目と2番目の差は運としか思えない。世の中の全ての順位が運で決まるとは言えないが、この60年代の宇宙開発競争に関しては運だった、と思う。どちらも1番を目指して頑張った結果の1番と2番。どちらも素晴らしい。ただ、繰り返しになるが、2番目は人々の記憶に残らない。
まあ、当たり前のことなのかもしれないが、冷戦中のソ連とアメリカが技術交流もない中、それぞれが独自の技術で有人宇宙飛行に成功し、どちらも偉業なのに、そして自分は宇宙関係の話は好きだという自覚があるのに、2番目を知らないことに驚いた、という話。